教員の紹介Faculty
石田 尊ISHIDA Takeru
- 人文社会系(文芸・言語専攻)准教授
- 言語学・日本語学
Linguistics / Japanese linguistics
主な担当授業
日本語の文法I、日本語音韻史、日本語方言論 など
研究分野の紹介
日本語のヴォイス(態)と他動性(他動詞らしさ、他動詞文らしさ)の問題を中心に、日本語の文法を研究しています。もう少し具体的に言い換えると、たとえば日本語の受動文はいったいいくつのタイプからなるのか、あるいは、最も他動詞文らしさの高い文から最も他動詞文らしさの低い文まで、日本語にはいくつのタイプがあると考えればよいのかといったことを知りたくていろいろ頭を悩ませている、ということになります。一つのアプローチだけではなかなか分かってこないことも多いため、最近は研究の方法論自体にも興味を持っています。
研究業績
- 「日本語の所有者上昇に見られる有生性制限について」『文藝言語研究 言語篇』67, pp.1-40. 筑波大学大学院人文社会科学研究科文芸・言語専攻、2015年.
- 「副詞的とされる遊離数量詞の文法的な特性について」『筑波日本語研究』17, pp.1-29. 筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科日本語学研究室、2013年.
- 「外項の遊離数量詞について―眼前描写的な同時把握量―」『文藝言語研究 言語篇』62, pp.21-36. 筑波大学大学院人文社会科学研究科文芸・言語専攻、2012年.
- 「受動文における動詞外項の降格について―日本語の受動化の多様性―」矢澤真人・橋本修(編)『現代日本語文法 現象と理論のインタラクション』pp.71-98. ひつじ書房、2006年.
- 「受動文与格句の文法的特性について」『日本語文法』1-1, pp.198-217. 2001年.
これまで指導した主な卒業論文
- 接尾辞「み」の使用と用法の拡大
- 教科教育文法における形容詞の扱いの変遷に関する考察―活用に注目して―
- 福岡県福岡市方言における可能表現使用の実態について―若年層を中心に―
- 原因・理由を表すとされる接続助詞「から」「ので」の異なりについて
- 大阪府泉北方言における可能表現の使い分けの実態
メッセージ
目の前に全く見たことのない、しかし特に問題なく動作しているようにみえる何かの機械を持ってこられて、「この機械のしくみを調べてください。ただし、壊してはいけません。」と言われたらどうしますか。
ある人は、面食らいつつもその機械を使い込んで、機械が発する音や表示、あるいは出力された生産物等から、内部の機構を推測しようとするかもしれません。ある人は何らかの測定器具を持ってきて、その機械の内部構造を調べようとするかもしれません。またある人は、同じ生産物が出力できる機械を自分で作って、元の機械のしくみもきっと同じだろうと推測しようとするかもしれません。
素朴な意味で、言語学も同じような作業をしています。機械であれば一度停止させて分解しまた組み立てる、その過程で内部のしくみを確認することもできるでしょうが、言語学では当然そうはいきません。「壊してはいけません」だけでなく、「機械を止めてもいけません」「分解してもいけません」というような条件がついた状態で未知の機械の機構を調べる、言語学は常にそういう困難さと奥深さを持っています。その作業が楽しいか苦しいかは皆さん次第ですが、ぜひその体験を共有してほしいと思っています。